2010年3月30日火曜日

マエストロ Osvaldo Requena の訃報


去年、お元気で日本中を演奏旅行なさっていたのに・・・。

今日、アルゼンチン・タンゴの偉大なピアニスト兼作曲家のオスバルド・レケーナ マエストロが3月25日(木)(現地時間)天に召されたことを知りました。 去年、マエストロと一緒に日本に来日した、チェロ奏者のクラウディオ・ポリさんが、メールで知らせてくださったのですが、私のスペイン語がつたないためなのか、何かの間違いなのか、そんなはずないでしょ・・・と信じられなくて、ラティーナさんのHPを見たら・・・、間違いではありませんでした。
http://www.latina.co.jp/topics/topics_disp.php?code=Topics-20100328004718
何でそんなに信じなれなかったかと言うと、マエストロは去年の民音タンゴでマエストロとして、1月13日から4月2日まで、日本の南は鹿児島から北は北海道まで約50公演をほとんど毎日精力的にこなされました。 私も2009年1月17日(土)中野サンプラザでの公演に行きましたが、もう一人のマエストロ、バイオリンのスアレス・パス との息もピッタリの素晴らしい演奏で、本当に感動して、一緒に行ったタンゴ仲間と、これこそアルゼンチンの人間国宝だと話をしたのを今でも覚えています。 You tubeでその時の映像があったので、ご覧ください。
http://www.youtube.com/watch?v=yX72x7DpeE8
これは去年の映像なので、マエストロが77歳の時の演奏です。 
うーんと、マエストロの素晴らしさをもう少しわかりやすく分かってもらえるかもしれない映像を、もう一つ見つけましたので、こちらをじっくりお聞きください。
http://www.youtube.com/watch?v=yE_OP9Ri_r8
Mauricio Marcelliというバイオリニストとの共演ですね。(本当は、スアレス・パスとの2人の演奏を聴いてもらえる映像があれば、もっと良かったのに!)曲は、カルロス・ガルデルの名曲“El dia que me quieras (思いの届く日)”です。 ウワーっ、すごく綺麗な調で、涙が出てきました。 私がマエストロの演奏で好きなところは、演奏が思いやりに満ちているように感じるところです。 あんなにピアノが上手なのに、“私の演奏、どうです!”みたいな、オレ様的なところはみじんもなくて(そういう演奏も、それはそれで素晴らしいけど)音楽と共演する演奏者とのバランスを常に考え・感じて、曲の編曲を手がけ、ピアノを弾いていらっしゃったと思います。 (それに、柄のシャツもステキですね。 お洒落さんだったのでしょうかね?!)とても淋しいけれど、マエストロはきっと天国で別の先輩マエストロと“カフェ・デ・ロス・マエストロス”(レケーナ マエストロが晩年指揮を務めた、マエストロ達を集めたプロジェクト楽団)を結成しようと、さっそく動き始めているような気がします。 
オスバルド・レケーナ マエストロ のご冥福を祈ります。 
マエストロ、素敵な演奏をどうもありがとうございました。

2010年3月8日月曜日

アカデミー賞 外国語映画賞


日本映画の翌年にアルゼンチン映画受賞!

本日、アメリカのアカデミー賞が決まりました。 去年は日本の“おくりびと”が外国語映画賞を受賞しましたが、今年はアルゼンチン映画“瞳の奥の秘密(El secreto de sus ojos)”
<ファン・ホセ・カンパネラ監督>が受賞しました。 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100308-00000079-flix-movi
この映画、昨年の12月に東京のスペイン映画祭でも1回上映されていたようですが、是非今年も全国の映画館で長い期間上映されるといいですね。 話の内容は、
現在と1974年に起きた事件をオーバーラップさせながらの展開。 長年勤めた刑事裁判所を退職したベンハミンは、担当したある1974年の強姦殺人事件が気になっていた。そして仕事を引退した後、この事件について本を書いていた。ベンハミンは当時、同僚にも恋をしていて、その後日談もこの映画の重要な要素になっているというサスペンス作品。
また、1970年代の軍事政権時代の闇を絡めた内容になっているそうです。 


アルゼンチンの歴史というのは、私達日本人には、ほとんど馴染みがないですよね。 劇団四季が「エヴィータ」というミュージカルをやっていたりするので、元大統領夫人のエヴィータのことは少し有名かもしれません。フォークランド紛争のことが新聞やニュースになっていたり、2002年にはアルゼンチンの国債は紙切れになってしまったことなどぐらいは知られていますが・・・。 アルゼンチンの軍事独裁政権は1976年から1982年まで続いたそうで、この間政治犯として捕まった人々の大多数は裁判を経ずに行方不明者となってしまったのだそうです・・・。 こ、っ怖い~。 1978年は、アルゼンチンでサッカーのワールドカップが開催されて、アルゼンチンが優勝していますが、この時海外からワールドカップを見ようと訪れた観光客の観察によって、軍事政権による人権侵害が国際社会の明るみに出ることにもなったそうです。 アルゼンチンにこのような暗い時代が2度と来ないことを願います。 
そうだ、最近アルゼンチンに関するニュースで1つ危惧していることがあります。 アルゼンチンの南端近くに、現在イギリス領のフォークランド諸島があります。(アルゼンチン名はマルビナス諸島) 有名なフォークランド紛争があった所です。そこで、2月末ごろから英企業が油田探査を始めて、アルゼンチンが国連に調停要請をしたというのです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100226-00000062-san-int
石油をめぐって、また戦争をすることがないように願うばかりです。

と、せっかくアルゼンチンの映画がアカデミー賞をとったおめでたい日に、怖い話をしてしまいましたが、素直にアルゼンチン映画の発展を喜びたいと思います。
追伸: 皆さん“アバター”をご覧になりましたか? 私は見ていませんが・・・。 是非見たいと思っています。 結局アカデミー賞は“アバター”のジェームズ・キャメロン監督の元妻のキャスリン・ビグロー監督の“ハート・ロッカー”が作品賞と監督賞を受賞しました。 重要部門の受賞に関しては、この2作品が有望視され、さらに元夫婦対決みたいな感じでクローズアップされていました。 夫婦共々監督という家庭もあまりないでしょうが、どちらかが監督でどちらかが俳優です・・というご夫婦の方が家庭は上手くいくのでしょうか? 

2010年3月2日火曜日

ピアソラの曲

昨晩の続きです。
フィギュア・スケートのプログラムで頻繁にピアソラの曲が使われるという話をしました。
一般的に、アルゼンチンタンゴの曲は・・・というと、ラ・クンパルシータとピアソラのリベルタンゴをあげられる方が圧倒的に多いはずです。 ピアソラが日本でメジャーな理由は、日本で最も有名なバンドネオン奏者の小松亮太さんがピアソラの曲を良く演奏なさるからということもあるかもしれませんし、テレビコマーシャルにも使われたり、またはこうしてフィギュア・スケートのプログラムにも使用されるからかもしれません。 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%9D%BE%E4%BA%AE%E5%A4%AA
私もピアソラが好きでアルゼンチン・タンゴを聞き始めました。 ところが・・・、いざアルゼンチン・タンゴのダンスを習ってみると、ピアソラの曲でレッスンをすることはまずないし、皆が集まって踊るミロンガ・パーティーにおいても、ピアソラの曲がかかることはほとんどありません。 そもそもアルゼンチン・タンゴはダンス・ミュージックですが、ピアソラは“踊るタンゴ”ではなくて“聴くタンゴ”を想定して作曲したのだそうです。 実際、ピアソラの曲を、通常習ったステップでマノビしないで踊るのは難しい。 多くのタンゴ・ショーでプロのダンサーがピアソラの曲で踊っていますが、アルゼンチン・タンゴ独特のステップや足裁きに加えて、クラシック・バレエとアクロバティックなリフティングを多様した振り付けになっています。
http://www.youtube.com/watch?v=KkEmnFBq3R0&feature=related
凄いですね~。 (暗くてよくみえませんでしたか?) こっちもどうでしょう?
http://www.youtube.com/watch?v=eKApx0WgUhY&feature=related
しかし、コレはあくまでもショー・ダンスなんです。 こんなに踊れたら、世の中怖いものがなくなるかも!!
ピアソラが“聴くタンゴ”を標榜していたとすれば、“踊るタンゴ”を作曲したり編曲した代表的なマエストロは、カルロス・ディ・サルリです。 以前、ダンスの先生に伺ったのですが、ディ・サルリはご自分も踊るのが好きだったそうです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B5%E3%83%AB%E3%83%AA
アルゼンチンのバイア・ブランカという港町で生まれたそうで、この街から出た偉大な人物ということで銅像があると聞いたことがありますが、ネットで見つけることは出来ませんでした。ご自分の生まれ故郷を曲のタイトルにもしました。 つまりバイア・ブランカという曲です。
http://video.google.co.jp/videoplay?docid=8595496740227906211&ei=iqeMS4iALoGowgPSr8m1CA&q=BAHIA+BLANCA%E3%80%80Carlos+di+Sarli&hl=ja#
この映像、サンドラ・カメロン・ダンススクールというところの生徒さん達の発表会の模様ですね。 私にとっては、結構面白い! そして、私達が普段習っているタンゴのダンスはこんな感じです。次はプロのバイア・ブランカのパフォーマンス!
http://www.youtube.com/watch?v=-j_67gfJ8vA
こちらはこちらで、ステキですね~。 ところで、カルロス・ディ・サルリの写真はいつもサングラスをかけていますが、これにはワケがあるのだと、タンゴ愛好家のSさんから教えていただきました。 マエストロのご実家は、銃を販売するお店をやっていたそうです。それで、マエストロが子供なんだか若い時、ある土曜日に“さー、今日は家族皆でピクニックだ”と言っていた矢先に銃が暴発して、カルロス少年の目の辺りにあたってしまって、楽しいはずの土曜日が悲惨な土曜日になってしまったのだそうです。 マエストロは怪我の痕を気になさっていつもサングラスをかけていたということです。 
ということで、タンゴダンスに向いている曲、そうでないタンゴの曲がありますが、今後もフィギュア・スケートなどのパフォーマンスにアルゼンチン・タンゴの曲が使われて、多くの方々がそれを機会に曲に触れてもらいたいと思います。 あと、もう一つ思ったことは、将来的にアルゼンチン人のフィギュア・スケーターがアルゼンチン・タンゴを踊るかのごとく、フィギュア・スケートをしている姿をいつか見てみたいです。

そしてそして、またもや昨日の続きのオリンピックのフィギュア・スケートの話に戻ります。 だって、とても不思議な事に気がついたんです。
金メダルのライザチェック選手のフリー演技(曲目シェヘラザード)とキム・ヨナ選手のフリー演技(曲はガーシュインのピアノ協奏曲)は本当に完璧でした。 演技が終わって、ワー凄いと思ったのですが、完璧すぎてか、心に残っていることは“凄い完璧だった”ということで、演技内容でココが好きとかココが良かったと思う場所とかがないんです。 私の心に残っている事をまとめると・・・。
キム・ヨナ選手が、ショートプログラム(SP)で妖艶に007のボンドガールを滑ったこと。
ライサチェック選手が、SPでダイナミックに火の鳥を滑ったこと。
浅田真央ちゃんが、SPで華麗に仮面舞踏会を滑り、フリー(ロング)・プログラム(LP)で重々しい鐘という曲に合わせて凄い形相で観客に訴えかける演技をしたこと。
高橋大輔選手が、SPで表現豊かにEYEという曲を滑り、LPの道という曲では喜怒哀楽の全てを凝縮して表現したこと。
アメリカの長洲未来選手がLPで可愛らしいカルメンを滑ったこと。
スイスのランビエール選手が、SPでは母国の英雄ウィリアムテルを、LPでは椿姫をエレガントに滑ったこと。
鈴木明子選手が、LPでウェストサイド・ストーリーを素晴らしいステップで魅せてくれたこと。
織田選手のLPのチャップリンは確かに緊張が伝わってきましたが、靴紐がとけてしまって演技を中断せざるを得なかったのに、最後まで立派に滑りましたね。 喜劇王チャップリンの人生も必ずしも良いことばかりではなかったようですから、こんなハプニングもチャップリンならでは? それとも、まさかチャップリンの悪戯でしょうか? でも最後まで立派に演じた織田選手をチャップリンも天国で喜んでくれていると思います。  

小塚選手のLPのギター・コンチェルトは、とにかく清々しかった。   そうだ、小塚選手はキッス&クライで他の選手同様に、自分の身内とか友人とかに“ありがとう”とかメッセージを述べていましたが、最後に自分の次に滑る若いデニス・テン選手に対して“デニス頑張れ~” と言っているのが聞こえました。 気持ちが良いですね! 
出来ることなら私が“さわやか賞”と題して金メダルを小塚選手に進呈したい気持ちです。
追伸: 男子5位のアメリカのジョニー・ウィアー選手の今期のエキジビションプログラムをリンクします。 SPもLPもノーミスで、とても良かったけれど、私が最もすきなのは彼のこのエキジビション。 
http://www.youtube.com/watch?v=R5vQq0t0kg0

バンクーバー・オリンピック さよなら、さよなら、さよなら~


長いようで、あっという間に終わってしまいました。

バンクーバー・オリンピックがとうとう閉会してしまいました! 
まずは選手の皆さん、次にコーチや関係者の皆様、お疲れ様でした。 みんなにとっても、この約2週間は、感動したり、悔しかったり、ビックリしたり、とても楽しい期間だったと思います。 オリンピックやワールドカップの時にいつも思うことがあります。それは、2位になって金メダルを取れなかった選手や4位になってメダルを獲得できなかった選手は、とても悔しい思いをなさるわけですが、でも決して自分を責めないで欲しいと思います。 全世界で2位や4位になるなんて、本当に素晴らしいことです。 存分に威張って、胸をはって欲しいと思います。 だってスピード・スケートなんて、百分の2秒差で金か銀が決まるなんて・・・、そんなのあってないようなもんじゃないですか。 もちろん勝負は勝負ですが・・・。 
たいがいの試合において、1位と2位の差はほんの僅かなのに対し、圧倒的な力を見せ、誰もがこの人以外にこの種目で金はありえないと納得したのが、スノーボードのハーフパイプのショーン・ホワイト選手の度肝をぬく、完璧な滑りというか技というか・・・。 スノーボードを履いて、あんなことが出来るのは、神様が宿っているとしか思えません。
そんな、ショーン選手がどうやってあんな凄い技を繰り出すのか、練習風景の映像がありました! こうやってあんなすごい事を練習するんですね!
http://www.youtube.com/watch?v=YQIvm_2ay-U&feature=fvw

神様が宿っていると思ったもう一人の選手は、男子フィギュア・スケート、ロシアのプルシェンコ選手です。 金メダルはアメリカのライザチェックに僅かの差で持っていかれてしまいましたが、(でもトリノですでに金を獲得しているから・・・。)テレビの解説者がおっしゃるに、8年間公式戦で跳んだジャンプで転倒していないのだそうです。 (一回引退して3年間公式戦に出ていないとはいえ・・・)今回だって、どんなに軸がぶれて跳んで、こちらはアット思っても、決して転びませんでした。 プルシェンコ選手にはスケートのジャンプの神様がついているに違いないと思ったのですが、8年前に確かにジャンプを失敗なさった映像を見つけてしまいました。
http://www.youtube.com/watch?v=qut2CjxJ2tw&feature=related
ソルトレイクシティー・オリンピックの時の映像です。 ジャンプには失敗しているものの、このマイケル・ジャクソン・メドレーは彼に合っている良いプログラムと思います。それにナンと男子でやっている人をほとんど見かけないビールマン・スピンまで!!(その後怪我のせいで、ビールマンスピンは出来なくなったようです。)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%95%E3%82%B2%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%82%B3
今回のショートプログラムのアランフェス協奏曲、ちょっと曲とステップ・振り付けがマッチしていないと思いましたよ。フリープログラムで使われたTango Amoreという曲は、エドウィン・マートンというハンガリーの作曲家・ヴァイオリニストの作品なようで、私が良く耳にするアルゼンチン・タンゴの楽曲とは少し違っていましたが、コンチネンタルタンゴ(ヨーロッパのタンゴ)と思ったほうが良さそうです。 そのプルシェンコ選手が、男子で4回転を跳ばないで金メダルはオカシイ、とか、マオは世界で始めて3回も女子でトリプルアクセルを決めたのに、それが加点対象にならないのはオカシイと言っているのが、話題になっています。 私は、プルシェンコ選手の意見には6割賛成しています。難しいことに挑戦している選手に高い評価が与えられるべきだという意見に賛成です。 そうでなければ、失敗を恐れずチャレンジをする精神が、メダル欲しさに損なわれると思うからです。 でも、4回転を跳ばない金メダリストがダメだとも思わないし、真央ちゃんは残念だけれどミスがあったので、ノーミスのキム・ヨナ選手に今回負けたのはしょうがないと思います。 人間がすることなので、それもあのような大舞台で、自分の出来ることを完璧に成し遂げるということは、至難の業だと思います。 ライザチェック選手、キム・ヨナ選手そして全ての金メダル選手を心からの賞賛したいと思います。 私の意見を続けると、フィギュアスケートにおいては、とにかく自分の得意技で勝負をするべきだとも思います。ジャンプが得意な選手だけが脚光を浴びるのではなくて、スピンやステップが上手な選手はそれで勝負をすればよいと思います。 だから、フリープログラムにおいては、同じジャンプを何回も跳んではいけないという規定とかをはずしても良いと思うのです。 ということで、 この話の続きはまた明日にします。 (眠くなってきた~)
ところで、アルゼンチンと何ら関係があることを書きませんでした。 こじつけに、フィンランドの女子のフィギュア・スケート選手で7位入賞レピスト選手がピアソラのアディオス・ノニーノでフリーの演技をしている画像をリンクします。(オリンピックの時の映像が無かったので、今年のヨーロッパ選手権の時の映像です。)
http://www.youtube.com/watch?v=_aY5QG8-nyg
それにしても、スケート界ではピアソラの曲はよく使われますね!