2010年8月2日月曜日

育ての親が「敵」 孫は葛藤

70年代 アルゼンチン 「左翼狩り」

8月1日(日)の朝日新聞で次のような記事を読みました。

70年代アルゼンチン左翼狩り ー 育ての親が「敵」孫は葛藤
孫101人奪還 祖母ら執念、 という見出しでした。

どういう内容なのかというと・・・。
アルゼンチンは1976年に軍事クーデターが起こり、それから7年間は軍による独裁政権が続いたそうです。 この間、独裁政権に反対する若者が拉致され「行方不明」になっていて、その数は約3万人なのだそうです。 行方不明といっても、拉致された人達は強制収容所に入れられ、拷問されて、その後銃殺されたり飛行機から海や川に突き落とされたのだそうです。 

その拉致された人たちの中には妊娠中の女性もいて、収容所で出産をし、生まれてきた乳児は、孤児院に預けられたり、売られたり、独裁政権の協力者や将校らが養子にしました。 生まれてきた子供たちが、その親達のように左翼的な思想を持たないように、軍政側に近い思想を持つ人間を増やす目的があって養子となった人も多いと言われています。そうした乳児は500人ぐらいいたようです。 
現在70歳代の自分達の子供を拉致され、孫を奪われた“おじいちゃんとおばあちゃん”達が、自分達の孫を探し出し、取り戻す活動をしている・・・というのです。 この孫を取り戻したい祖母たちの会は「五月広場の祖母たち」という名前だそうで、ここ30年間の活動の中で約101人の孫達の身元がDNA鑑定などによって判明したそうです。 
しかし真実が判明して、ハッピーエンドとはいきません。 なぜなら、孫たちは自分の親だと愛し、慕い、頼りにしてきた人が、実は本当の自分の親を殺していた、あるいは殺人に加担していた人だということを知り、心の葛藤を強いられてしまうからです。 自分がもしも“孫”の立場だったら・・・、と記事を読みながら考えましたが、どうしても想像さえできませんでした。(実は両親の実家でこの新聞記事を読んでいて、新聞を読みながら両親の顔をチラチラ見てみましたが、どうしても記事に関して全く実感がありませんでした。 )だからこの孫達の心の葛藤や傷がどれ程なのか分かりようもありません。 ただ、とてもとても悲しいことなのだということだけは分かります。 真実を知った孫達の中には困惑し、精神的に不安定になる人もいれば、真実を受け入れられない人もいるそうです。 そりゃ当然ですね。 しかし、中には育ての親と行き来しつつ、本当の祖母とも家族の関係をつくる人もいたり、自分が悩んだ経験を活かして心理カウンセラーとなり、同じ悩みを抱える人のカウンセリングを受ける人もいれば、国家議員となって“人権委員会”の委員長を務めるに至る方もいるそうです。

この記事を読んで、まず全世界でこのような悲惨な歴史が繰り返されない事を祈りたいと思います。 また今後真実を知る孫達が、苦しいでしょうが現実と向き合い、悲しい歴史を乗り越えて自分の人生を前向きに生きて欲しいです。(と他人事を言うのは簡単だということも良くわかりますが・・・。)